「教育カウンセリング研究」 投稿論文作成の手引き

 論文の作成は、学会の論文としてふさわしい形式とすること。すなわち、問題提起、研究目的、研究の意義、文献(先行研究)研究、研究方法、研究結果、考察などを明確にし、事実と推測を区別し主張の論拠をはっきりさせ、全般的に簡潔な記述を心がけること。また、論文全体の構造が分かりやすいように、大項目(Ⅰや1)中項目は(1)、小項目は①②のように項目を整理して記述する。

1.「デアル調」文体で統一する。
常用漢字・現代かなづかいの使用を原則とする。句読点は、全角文字の「,」と「。」を用いる
ただし、引用文献においては半角文字の「,」「.」を用いる。

2.本文中の外国語の使用はできる限り避ける。
外国人名、適切な日本語訳のない術語、書き物やテストなどの場合のみとする。

3.論文のタイトル(標題)の付け方
①研究の内容が的確に伝わるように、必要なキーワードのいくつかに着目して、それらを簡潔
につなげる。

②簡潔すぎても研究の内容が伝わらないので、キーワードを追加して表記する。
また長すぎても理解しづらいので、その場合は、主題と副題に分けて表記する。

4.最重要な言葉には、定義を行う(辞書的定義のほか操作的定義もある)。
例えば、「自主性」は辞書では「自分の判断で行動する態度」(「大辞林」)とあるが、研究の中では「授業での自主性…教師の指名を受けない子どもの質問、発言等(操作的定義)と定義して研究を行った。」などと表記する。

5.原著論文や総論論文で行う「文献的研究(これまでの内外の文献を精査して、こんにちの実践に貢献しうる知見を見出す研究)」では、古典的な文献だけではなく最近の文献にもあたること、一部の偏った意見の文献だけでなく、それと対立するような意見の文献にもあたること、また少数の文献ではなく、なるべく多数の文献にあたるなどして、ひとつの主張や意見にこだわらず、広い見地から議論を行い、結論を導き出すように留意する。

6.原著論文や実践報告論文で行う「実践的研究(実践をふりかえり、自他の実践に貢献しうる知見を見出す研究)」では、次のような点に留意する。

①実践の意義について、対象者(乳幼児、児童生徒、学生、社会人など)の実態や教育動向との関連で実践のねらいや工夫・アイデアを説明する。

②ほかの人が追実践できる程度に実践の概要を簡潔ながらも的確に記述する。

③実践にかかわった自分の立場を明確にする。例:学級担任として、管理職として、など。

④実践の対象の対象者の学年(年齢)、性別、実態を書く。

⑤カウンセリング事例報告の場合、主訴、家族、生育歴、問題の経緯等を簡潔に記す。
なお、事例に登場する固有名詞は、プライバシー保護のため、登場順にA男、B県、C市、D小学校、E子などと記載する。実際の名前のイニシャルの使用を避ける。また実践の実施日についても、年月日はX年5月7日のように記し、その1年後はX+1年とする。

⑥実践の内容(事例の経過)…実践の内容とそのときの子どもの具体的な様子を記述する。

⑦実践者の対象者に対する主観的な印象よりも、客観的な証拠を提示できるとよい。
例:「このような授業を行ったところ、教室は興奮のるつぼと化した」とか「このような教師の発問に対し、子どもたちの目はらんらんと輝き、教師にも大きな感動を与えた」のような記述は避け、「授業後に実践したアンケート調査の結果、本授業を今後も受けたいと回答した生徒は85%になった」というような客観的指標を提示する。

⑧考察は、実践の内容と対象者の反応(変化)との関連について、特筆できるものを拾い出し、
それらについて原因と意義を検討する。
 ・「ねらい」や「仮説」があれば、それが検証できたかどうかを述べる。
 ・他の人に参考になりそうなところ、理論的に面白そうなところを拾い出す。
 ・先行実践と比較してみる(先行研究があれば、それと比較してみる)。
 ・提言できるようなものがあれば、それをまとめる。
 ・今後の課題(残された課題)に最後に触れる。

7.原著論文や資料論文で行う「データ型研究(調査・観察・面接・実験などにより量的・質的データを収集して、こんにちの実践に貢献しうる知見を見出す研究)」では、次のような点に留意する。

①〔問題と目的〕
 ・テーマ設定に至った経緯(児童生徒の実態や先行研究)を述べる。
 ・先行研究の単なる追試ではなく、新しいアイデアや工夫があるとよい。
 ・研究で検証する仮説(あれば)を述べる。
 ・以上のことを踏まえ、研究の目的を述べる。

②〔方法〕…データ収集の対象者の年齢や人数、場所、時期、手続き、観察法、面接法、質問紙法などを述べる。

③〔結果〕…データの結果をできるだけ簡潔に、必要に応じて図や表を付けて述べる。
必要に応じて、統計的検定(有意性検定)を行い、それから確実に言える結果を述べる。

④〔考察〕
 ・仮説がある場合は、仮説が検証されたかどうかを述べる。
 ・得られた結果を先行研究と比較する。
 ・サンプルに限界がある場合は、結果をあまり一般化しない(1クラスの調査の場合、「1クラスの調査結果なので結果を一般化するには慎重にしたい」などと述べる)。
 ・今後の課題についても述べる。
  例:1クラスの調査なので、今後、ほかのクラスでも調査を行うことが必要である。
  例:小学生の調査なので、今後、幼児や中学生でも調査を行い、発達の変化を調べる必要がある。

8.注の付け方
注(引用文献は除く)は、文中の該当箇所に半角で1)、2)…などと表記し、本文末尾にまとめて記載する。

9.文献の引用の仕方
(1)本文中の書き方

①本文中では、引用文献の著者の敬称を略し、次のように記載する。
 ・國分(2008)が指摘しているように、…。あるいは國分(2005, 2007, 2008)で述べられているように、…。
 ・複数の人数の場合はアルファベット順にする。
  例:…という指摘もある(岸, 2006;國分, 2008)。
 ・要約引用ではなく、直接引用の場合はページを記載する。例えば、國分は「・・・・・・・・(國分,
2008, pp.34-35)」と述べている、などのように。1ページの場合はp.34のようにする。

②同一筆者の同一年の論文の引用については、(國分, 2008a, 2008b)のようにa, bをつける。

③初出の文献以外は、第2著者名以下は略する。
 ・國分ら(2005)は、…。
 ・Wechsler et al.(1991)によれば、…。

(2)末尾の文献の書き方
引用文献は、外国の文献を含めて著者名のアルファベット順で、以下の例にしたがって、注のあとに、まとめて記載する。なお、欧文の書名・雑誌名をイタリック体で示す。また、雑誌巻数をゴシック体で示すこと。

①著者名の順序はアルファベット順で一貫させる。
例:國分久子(Kokubu Hisako)
  國分康孝(Kokubu Yasutaka)

②同じ筆者の文献が複数ある場合は、年代の古い順から並べる。
例:國分康孝 2004
  國分康孝 2005
  國分康孝・國分久子 2005

③同じ筆者の同年の引用
例:國分康孝 2008a
  國分康孝 2008b
  國分康孝 2008c

④文献の書き方は、著書と雑誌論文、訳本とでは少し異なる
〔著書の場合〕…著者名 発行年 著書名 発行所(各項目間に全角のスペースを入れる)
例:國分康孝 1987 学校カウンセリングの基本問題 誠信書房

〔訳本の場合〕…原著について記載し、訳本については後ろに(  )として記載する。
著者名 発行年 著書名(イタリック) 発行所(訳者 刊行年 書名 発行所)
例:Knobloch, F. & Knobloch, J. 1979 Integrated psychotherapy. New York:Jason Aronson.(山口隆・増野肇(監訳) 1983 統合精神療法 星和書店)
※英語表記部分については、必要に応じて半角スペース1個ないし2個を入れる。

〔雑誌論文〕…著者名 発行年 論文名 雑誌名, 巻(号), 頁.
例:小野寺正己・河村茂雄 2003 学級における対人関係能力育成プログラム研究の動向 -学校とスクールカウンセラーに求める援助内容を中心として- カウンセリング研究, 36, 272-281.(巻号についてはゴシック体とする)

〔分担執筆の著書の場合〕…著者名 発行者 章名 編者名 著書名 発行所, 掲載頁.
例:片野智治 2004 ガイダンスの実際 國分康孝・中野良顕(編著) これならできる教師の育てるカウンセリング 東京書籍, 66-78.

⑤外国の文献も同じ
例1:〔著書の場合〕…著者名 発行年 著書名 発行所.
 Burns, D. D. 1993 Ten days to self-esteem. New York: William Morrow.
例2:〔雑誌論文〕…著者名 発行年 論文名 雑誌名 巻 号 頁
 Dodge, K. A. 1993 Social cognitive mechanism in the development of conduct disorder and depress. Annual Review of Psychology, 44, 559-584.
例3:〔分担執筆の著書の場合〕…著者名 発行者 章名 編者名 著書名 発行所,掲載頁.
 Sarason, I. G. & Sarason, B. R. 1990 Test anxiety. In H. Leitenberg(Ed.) Handbook of social and evaluation anxiety. New York: Plenum Press. 475-495.

付則:この投稿論文作成の手引きは2010年6月1日より施行する。